元図書館員のご夫婦の蔵書がスタート
親子で本との出会いが楽しめる場所
純文学、映画、サブカル、思想系……。多彩で深い品ぞろえに惹かれ、以前から何度も足を運んでいた、雲波。実は子どもの本も壁いっぱいにあり、親子で行っても楽しめるお店なのです。
子どもが立ち読みを止めないので焦っていたら、「いいのよ」と椅子を持ってきてくださり、古本屋さんに勝手に抱いていた敷居がとても低くなりました。
店主の佐藤勝彦さん、奥様の石川七重さんにお話を伺いました。
~お店のオープンはいつですか?
2014年9月5日です。
~お店の名前の由来?
由来の元となったものは、3つあります。
①中国の詩の一節、「雨過天晴雲破処」(青磁の色を、雨が降った後の雲の隙間に見える空の色にたとえたもの)から。店名なので「破」は「波」にしました。
②ロアルド・ダールの「チョコレート工場の秘密」に出てくる、“ウンパ・ルンパ”の響きから。
③寺田寅彦の随筆にある「雲のようにまた波のように」という一節から。
※寺田寅彦随筆集 第一巻(岩波文庫)
~お店を始めたきっかけは?
2人とも図書館員をしていたものですから、本を読んだり、買ったりするのが趣味で、どんどん増えっていって。定年退職後、実家をリフォームし、たまり過ぎた蔵書を並べるところから始まって今の形になっていきました。(佐藤さん)
「現在ではお客様からの買い取り商品も店に並びますが、わりときれいな本が多いと思いますよ。自分が1-2度読んだだけですから(笑)」
「基本的には自分が好きな作家や分野が多いですが、お客さんの動きを見ながら出したり引っ込めたりと、中身を変えています。いろいろな本があるので、自分の好みから一歩踏み出して本と出会ってほしいと思います」(佐藤さん)
「児童図書を専門としていたので、子どもの本が自ずと増えました。子どもが自分のお小遣いでも買えるように、と思って値段を安くしたら、大人買いされちゃったことも(笑) 図書館的表現でいうと、いわゆる909(日本十進分類法の「児童文学研究」)の辺りをぜひ読んでもらいたいと思って置いています。なかなか動きませんが」(石川さん)
「いい本には言葉の重みがあるから、古くてもごみにするのではなく、少しでも多くの人に手に取ってもらいたいと思っています。子どもには『どんな本が好き?』と聞きながら、一緒に探すこともできますよ」(石川さん)
〜おすすめの本は?
森忠明「君はサヨナラ族か」(佐藤さん)
M.センダック「いるいるおばけがすんでいる」
(※「かいじゅうたちのいるところ」として知られる、センダックの作品“Where The Wild Things Are” 。現在の冨山房の前に、ウエザヒル出版から出ていたバージョンです。) 「ざんぶりこっこがいっしゅうかん ざんぶりこっこがいちねんかん」といった七五調のリズムが楽しく、読み聞かせでは子どもたちも喜びます。(石川さん)
ご夫婦の本に対する愛情を隅々に感じることができました。セレクトも、稀少であることや専門的であることを誇るのではなく、「多くの人に良い本をお勧めしたい」という想いが一貫していて、図書館員だったからこその視点だと思いました。
ネット販売などはやっておらず、HPやブログなども開いていないので、お店に来て直接手に取ってもらう形で今後もやっていく、とのこと。
書棚の一部に車輪がついていて、「これは、棚を移動してスペースを作り、イベントなどもできるということ?」と前からチェックしていたリポーター。これについて尋ねると、「はじめはそんなことも考えたんだけど、本を全部出さないと重くて動かなくて」と笑う佐藤さん。当面イベントなどの予定はないということです。石川さんの児童文学のお話しや、佐藤さんの文学愛好話なども聞く機会があったらいいなあ、と勝手に夢想してしまいました。
佐藤さんのぶんハピ 国分寺歴 63年
空の広がりとさくらの季節の国分寺尼寺跡
湧水から北に山を登っていって、都立公園に出たときの空の広がりが良い。また、
桜の季節の国分寺尼寺跡あたりもいいですよ。
※この取材の後、佐藤さんが急逝され、お店はしばらくお休みされていました。今年に入り、開店日などを変更する形で再開されましたので、石川さんのご了承を得てこちらのインタビューを掲載させていただくことにいたしました。
取材:ぶんハピリポーター
お店情報古本 雲波 TEL:042-321-2258 住所:東京都国分寺市本多1-1-17 (国分寺駅北口から徒歩7分 国分寺街道「国分寺七小入口」信号脇) 営業時間:12:30〜19:00 定休日:毎週 火・水・木曜日(祝日の場合は開店) 夏休み/冬休み(店頭に貼りだされます)
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