祖父の活版印刷機を受け継ぎ
魅力的な作品を生み出すアトリエ
国立市にほど近い住宅街の一角に活版印刷「九ポ堂」を営む酒井草平さん夫妻の自宅兼アトリエがあります。
現在、使用している活版印刷機は、化学者でテレビのブラウン管の製作などにも携わっていた草平さんのおじいさまが、定年退職後、趣味で旅行記などを自ら印刷していた時のものだそうです。趣味のレベルをはるかに超える本格的な機械と活版の活字の量の多さに驚かされます。
九ポ堂という屋号は、印刷に使っていた活字の大きさの9ポイントにかけて、おじいさまとお父さまが名付けた「酒井九ポ堂」から酒井を取ったものだそうです。
活版の道具は、おじいさまが亡くなってからそのままになっていました。九ポ堂は、当初はDTP※1の仕事をしていましたが、2008年からご夫婦で、活版※2や凸版※3の印刷デザインも始めました。
※1DTP:デスクトップパブリッシングの略で出版物の原稿作成や編集、デザイン、レイアウトなどの作業をコンピュータで行い、データを印刷所に持ち込んで出版すること。(IT用語辞典 e-Wordより引用)
※ 2活版印刷:活字を組んで作った版で印刷する方式。
※ 3凸版印刷:出っ張った部分にインクが付き、それを紙に印刷する方式で、ハンコの原理と同じ。活版印刷も凸版印刷の一つ。
長い間使っていなかった活版印刷機も使うために修理に出し、戻ってきたのが2012年の5月。印刷機が動く音を聞いて「子どもの頃に祖父が印刷していたときのリズムを思い出し、とても懐かしかった」と酒井さん。
クルミドコーヒーのオーナー影山さんが「是非、活版で本を印刷したい」と熱望されたのは、ちょうどその頃。活版印刷機を使って初の本作りに挑戦することになったそうです。
この印刷機はそもそも印刷用ではなく、あくまで試し刷りの校正用だそう。校正機は手で紙を差し入れて、ペダルを踏んでローラーを回し、紙のズレやインクの濃さ、機械の圧力を調整しながら一枚一枚、手作業で印刷します。初めての本の印刷は試行錯誤の連続だったそうです。
その上、一回に印刷できるのは片面4ページ。今回の本は220ページなので、1冊の印刷に55回印刷機を回し、 初版の100冊では、プレスの回数が5千回以上と気が遠くなる回数です。
作家の方が言葉を紡ぎ、印刷屋さんが丁寧にそれを刷り、製本屋さんが本の形にする…この本が出来上がるまでの道筋を知ると、手に取った時の本の重さが他の本とは明らかに違ってきます。
九ポ堂では注文を受けてチラシや名刺、 ポストカードなどの印刷をするほか、オリジナルのポストカードも作っています。
デザインやイラストのセンスの良さ、紙や色へのこだわりなどはお二人独特のもの。オフセット印刷※4では出せない懐かしい風合いに惹かれ、雑貨屋さんからも注文が入っているそうです。
※ 4オフセット印刷:印刷技術の一つ。実際に印刷イメージが作られている版と紙が直接触れないのが特徴。版に付けられたインキを、一度ゴムブランケットなどの中間転写体に転写(offset)した後、紙などの被印刷体に印刷するため、オフセット印刷と呼ばれる。(ウィキペディアより引用)
おじいさまの残した機械や活字を受け継ぎ、二人のエッセンスを加え作り出す作品たちは、夫妻の人柄そのままに温かく魅力的なものです。
「アトリエの一角を自分たちの作品やこだわりの紙ものを並べたお店にして、ワークショップやセミオーダーの受注会も開いてみたいんです。また、今のところはカードや一筆箋がほとんどですが、いつかポストカードの世界観を本にまとめてみたい」と将来の夢を語ってくれたのは、主にイラストを担当している奥様の葵さん。
1枚1枚丁寧に印刷されたカードを手にすると、久しぶりに大切な人へハガキを出してみたくなりました。皆さんも是非一度九ポ堂の世界に触れてみてください。
普段はアトリエの公開はしていませんが、見学したい方は「事前にTEL・FAX・メール等でご連絡ください」とのことでした。
酒井草平さんのぶんハピ 国分寺歴 37年
高木町の手作りハム/ソーセージのお店「アレマンニャ」
ベーコンやソーセージだけでなく、パンもおいしいお気に入りのお店です。友人への手みやげにもよく使っています。特にレバーケーゼがおすすめです。
酒井葵さんのぶんハピ 国分寺歴 5年
はけの森の雰囲気
以前はけ下の小金井に住んでいたこともあり、野川沿いや武蔵野の森が大好きです。のんびりとした気分になりリフレッシュできますね。
取材:ぶんハピリポーター
お店情報九ポ堂 TEL/FAX:042-573-1641 住所: 〒185-0033 東京都国分寺市内藤2-10-13 オリジナルカードは九ポ堂ネットショップの他、渋谷や池袋のLOFT、その他イベントでも購入できます。イベント情報については、HPをご覧ください。
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