スキル  家事シェア NPO法人tadaima! 三木智有さん

家族みんなで居心地よい家をつくる
NPO法人 tadaima! 三木智有さん

女性目線で語られることの多い家事・育児。NPO法人 tadaima!は男性目線で家庭のあり方を考え、活動をしています。家事や育児を家族で「シェア」するという考え方の中には、たくさんのヒントがありそう。代表の三木さんに、三つのスキルを教えていただきました。

三木さんのプロフィール

tadaima! 代表理事の三木智有さん

NPO法人tadaima!代表理事。日本で唯一の家事シェア研究家。子育て家庭のモヨウ替えコンサルタント。
フリーでインテリアコーディネーターの仕事を請け負うかたわら、男性の暮らし方を変えていきたいとNPO法人tadaima!を設立。

 

 

tadaimaに学ぶスキル

★1・「家族の家事のボーダーラインを決める」

(イメージ)

「家事シェア」は、夫が妻の家事を「手伝う」のではなく、それぞれが家事を分担して受け持つという考え方。しかし、メインで家事を回す人の求めるクオリティと、それ以外の人のクオリティにズレがあることで生じるストレスが「家事シェア」の導入を難しくするのだと三木さんはいいます。

「(家事シェアを妨げる)ママ側の要因として多いのは、家事へのこだわりがあるために、人に委ねられないということです。パパのスキルがママの求めるところに届かないことが多く、ママのこだわりを再現できない。一方で、パパ側はそこまでのクオリティである必要を感じていないため、やりたくない気持ちと折り合いをつけるしかない、という発想になってしまいます」

パパ家事の学校の参加者と記念撮影

こうして双方にストレスが生まれる状況を少しでも改善するには、家事について家族のボーダーラインを決めるのがポイント。こだわりを強く持つ人が求めるクオリティのおよそ6割から7割に目標を設定しておいて、残りの部分はこだわりがある人が埋める、という考え方です。

例えば、洗濯ものは洗ったら乾燥機から出して、それぞれのかごに入れる。それを畳んでしまうのは、「きれい」にこだわりのある人。他の人はとにかく、かごに分けて入れるところまではする、という塩梅です。

「パパが必要を感じないからといって、その意識を変えようとは思わない方がいい。無理ですから。でも、仕組みを変えることはできます」という三木さんの言葉に、思わず深く頷いてしまいました。

★2・「それぞれが自己管理できるスペースを作る!」

モヨウ替えではじっくり話します(左が三木さん)

子どもが生まれるタイミングが大きなチャンスだという、モヨウ替え。以前は女性がメインで相談に来ることが多かったそうですが、「家族が住む場所は家族で考えたほうがよい」ということで「夫婦割り」を導入。今では9割が夫婦で相談に訪れるといいます。

「子どもが生まれるときならば、子どものスペースはどこ? という話しになります。パパもその場にいれば、『じゃあ、パパのスペースは?』 という話にもなる(笑)。パパの意見が反映され、自分のスペースができると家事をする側の気持ちがわかるようになります。互いに家庭のことについて共感できるようになると、家事シェア率も高まる、というサイクルも生まれますよ」(三木さん)

★3・「家事を渡す側のメンタリティが重要!」

tadaima! キッズ家事プロジェクト(HPより)

家事シェアをするのは夫婦だけではありません。 子どもだって、成長に合わせた家事シェアができるのです。「家事シェア」というとおり、子どもが自分の担う家事を自分のものとして認識するというのが、人の仕事を助ける「お手伝い」とは違う点。

「親がする家事を『ちょっと手伝って』とやってもらうのではなく、自分のものとしてやってもらう。その場合、親がどう見守るかがキーで、家事を引き渡す側のメンタリティが非常に重要になります」と三木さん。

時間の制約上、親がやってしまった方がよいことや、全部は任せられない時などもありますが、その時にもあくまで「今回はママが手伝うけれど、本来はあなたの仕事だ」という意識を忘れないことが大切なのだそう。

(イメージ)

実際、三木さんのご家庭でもお子さんは自分の家事を受け持っているのだとか。親も「これは親の仕事のお手伝いなのか、子どもの仕事なのか」をブレずに区分けして渡すのだそうです。

キッズ家事プロジェクトでは「いろいろな家事を経験させる機会を、家庭の中でどれだけ増やせるか」を考えるために、親からの声がけやサポートの仕方をはじめ、子どもが楽しく家事を学ぶためのツールの開発などもしています。

誰におすすめ?

tadaima! のスキルは全てのご家族に役立つものですが、これから子どもが生まれるご家庭、小さいお子さんがいるご家庭は、仕組みを整えるチャンス。特におススメです。

このスキルを持つといいこと

家族一人ひとりが役割を持ち、コミュニケーションを取りながら居心地のいい場所をみんなで作る、という家庭の在り方が生まれます。

「よく言うのが、『ママには負担と不満がある』。負担については、家事代行やサポートサービスなども増えてきているので、そこに委ねてもいい。でも、不満(不公平感)を癒せるのはパパ。ですから、コミュニケーションは常に取っておくことが肝心です。『私しかできない』と思わずに家族で一緒にやっていくことが大切ではないでしょうか」(三木さん)

もっと知りたい方へ

tadaima!の活動やノウハウは様々なメディアで紹介されています。講座やイベントの開催、実際に各ご家庭に伺ってのアドバイスも行っているそう。詳しい情報は、tadaima!のHPをご覧ください。

tadaima! http://npotadaima.com/

取材を終えて

家庭の話を男性から聞く、ということ自体が新鮮でした。でもよく考えれば、みんなの居場所である家庭のことを家族それぞれの目線で考えることって、とても大切です。家事の分担というと「そっちがずるい」「こっちが多い」という押し付け合いになりがちですが、三木さんのお話しは感情的な部分も理解しつつ、とても公正で理にかなったものなので、スッと胸に入ってきました。tadaima! の活動はどれも「ありそうでなかった発想」で刺激的です。今後も続けて見ていきたいと思いました。

 

取材:ぶんハピレポーター