第3回 尾崎真澄さん オザキエンタープライズ(株)副社長 

「ぶんハピねっと」が注目する、国分寺の「あの人」にインタビューします。
国分寺市内と近隣にてアミューズメント店舗OZEC、グループ企業として国立市で介護施設、八王子市でスイミングスクールを経営しているオザキエンタープライズ株式会社の副社長、尾崎真澄さんにインタビュー。同社は、社内での人権啓発活動に会社全体で取り組んでいるユニークな地域密着企業です。人材を育てることで地域へ貢献していきたいという尾崎さんの取り組み、国分寺市での今後の素敵な計画についてお聞きしました。

尾崎真澄さんのプロフィール

東京都八王子市生まれ。現オザキエンタープライズ(株)の社長であるご主人と結婚すると同時に同社に入社。平成6年、副社長に就任。社員教育、採用担当役員。3児の母。2003年にジュネーブで開かれた国連人権小委員会で講演。2011年にはストックホルムのクラブハウス※の世界大会でも講演を行うなど多忙な日々を送る。社内での人権啓発への貢献が評価され、2011年に「人権功労賞」※を中小企業として初受賞。

※ 人権功労賞—「人権文化を育てる会」が独自の判断基準に基づき人権啓発活動に顕著な実績を挙げた企業や個人に対して「人権功労賞」顕彰を実施。第1回目の受賞企業は全車両にシルバーシートを採用した阪急電鉄
※ クラブハウス―精神障がいのある人が自主的に集う、社会復帰のための自立支援の組織(日本国内に5カ所)。クラブハウスの活動や運営は、スタッフと利用するメンバーが対等な関係で一緒に話し合いながら決めていく

国分寺発「世界一幸せになる朝礼」

 ―「世界一幸せになる朝礼」にゲストとして参加させていただきありがとうございました。既に2800名近い方が参加されているとのことですが、社員の皆さんが、はつらつとしていてプラスのエネルギーにあふれている朝礼でした。

 尾崎副社長(以下、敬称略) ありがとうございます。この朝礼は、他社の朝礼に参加して良かった内容を取り入れたり、以前社長と私の2人で西田文郎さん※のメンタルトレーニングを半年間ほど受けた中から、参考にしたいところをポイント、ポイントで取り入れて行っています。
朝礼は、「本気ジャンケン」「ハッピー体操」「1分間ストローク※」などで構成し、主にメンタルトレーニングを目的に行っています。
最近では、「速読」がメンタルトレーニングにとても良い方法なので、朝礼に取り入れています。

※西田文郎—北京オリンピックで金メダルを獲得した女子ソフトボールチームを始め多くの国内トップスポーツ選手を指導するメンタルトレーナー
※ストロークとは、認知(肯定)、あるいは否認(否定)を表現・伝達する言動の一単位のこと

 ―この朝礼には具体的にどのような狙いがあるのですか?

世界一しあわせになる朝礼

尾崎  たとえば、「本気ジャンケン」では、負けた人も「やったー」って喜ぶんですね。負けたというマイナスのエネルギーを次には勝つぞというプラスのエネルギーに即座に(約3秒間)変換することを目的にしています。
 「ハッピー体操」は、「ハッピー」と言いながら両手でL字(Love & Lucky)のフレームで自分の顔を囲み、にっこり笑うことで言語と行動を一致させて思考(潜在意識)にプラスイメージを楽に送り込むことが出来ます。
「1分間ストローク」ではペアになった人と膝をつき合わせて向かい合い、相手の長所をただひたすら褒めることで相手にも自分の中にもプラスのストロークを増やします。これは日常的にも社員間で「サンクスカード」を贈りあい、手書きの文字で感謝を伝えることもおこなっています。

Love & Luckyのフレームで笑顔の尾崎社長と副社長

―私も副社長の尾崎さんから朝礼の中でたくさん褒めてもらいました。(笑)
面と向かって褒めてもらうのはとても恥ずかしかったのですが、普段の生活で、褒めてもらう機会はなかなかないので嬉しかったです。

尾崎 そうなんです。その嬉しい気持ちを周りの人へ広げていくことが大事だと思っています。プラスのストロークをたくさんもらうと幸せで笑顔になるし、他の人へプラスのストロークを投げかけることで、自分にも周りにもプラスの影響を与えることが出来ます。

―朝礼には、人を育てるエッセンスがたくさん入っていますね。

尾崎 尾崎家が、350年続く農家ということもあって、会社経営のベースに「農家の心を大切にしていこう」と言う思いがあります。土をよく耕すことでいい作物が実りますよね。環境を整えることでその人が元々持っている芽を伸ばしていく、種は完全だと言う考え方なんです。

―ところで、会社のイメージキャラクターが「りんご」だと言うことですが、「りんご」にはどのような意味が込められているのですか?

尾崎 りんごは、横に切ると種の部分に星があって、縦に切るとハートの形のようになりますよね。外見や育った環境など人はみんなそれぞれ違うけれど、一人一人の内側には星のような輝きと暖かい心を持っているという意味を込めています。それで、縁のあるりんご農家の方のところで収穫したりんごを毎年、店にいらしたお客様に差し上げています。その際に手書きのメッセージをつけて差し上げていて、とても喜んで頂いています。

会社全体で人権活動に取り組む

―現在、社内で力を入れて行っているOHR(Ozec Human Rights)、人権活動についてお伺いしたいと思います。そもそもこの活動はどのようなきっかけから始まったのですか?
(オザキエンタープライズ(株)は、2011年に「人権文化を育てる会(世話人に日本ユニセフ協会会長赤松良子氏他8名)」より社内での人権活動に対して人権功労賞を受賞)

左から「人権啓発標語&ポスターコンテスト作品集、小冊子『愛する人へ』、OHRレター「こころの扉」

尾崎 1999年の男女雇用機会均等法が施行されたのを機会に社内で人権について学ぼうとスタートしました。学んでいくうちに「人権は生活そのもの」だと気づいたんですね。
それで活動のベースになる『愛する人へ』という小冊子を社内で作りました。
この活動を応援して下さっている川村文男先生は、18年間、大手銀行で、人権を学ぶリーダーをしていらした方で、偶然にも国分寺在住だったという縁もあり、10年前から月1回のOHR委員会のミーティングに入っていただいています。先生には身近なところから人権について考える機会にしてほしいと毎月発行している社内報「こころの扉」の執筆をお願いしています。
その他に、国連の定めた人権週間(12/4〜12/10)に合わせて毎年、人権啓発標語とポスター、作文を社内で募集してコンテストを行っています。

―精神障がいのある方を受け入れる「過渡的雇用」※は、具体的な人権活動のひとつだと思いますが、今回、インタビューをさせて頂くまでクラブハウスという施設のことを全く知りませんでした。

尾崎 現在、クラブハウスは、世界30カ国で約300カ所あります。2011年にス

2011年ストックホルムで開催されたクラブハウス世界大会にて講演

トックホルムで開催されたクラブハウスの世界大会に招かれ、そこで講演し、パネルディスカッションにも参加してきました。日本ではまだ5カ所しかないんですね。
クラブハウスは精神障がいのある人が自立するために障害のある人自身が支援を受けながら運営している施設です。当初、「過渡的雇用」を決めるまでは、社内で不安の声もありましたが、受け入れたクラブハウス「はばたき」(小平市)の方が働くことでどんどん元気になっていくのを目の当たりにし、私たちの方が元気をもらうことになりました。

※ 過渡的雇用—精神障がいのある人が地域の一般企業で短期間の簡単な仕事を行い実際に働いて賃金を得ることで働くことに適応していく場を提供する雇用形態。

―「人権問題」と聞くと難しく考えてしましますが、一人一人の違いを認め、それぞれがかけがえのない大事な存在であるということに気づき、生まれてきたことに感謝するということなんですね。

尾崎 そうですね。最初は私たちも難しく考えていたのですが、取り組んでみると今まで私たちが大事にしてきたことに重なる部分がたくさんありました。「人権」という言葉には、固くて難しい印象がありますので、もう少し優しい言葉になれば、もっと取り組みやすくなると思います。

 

地域へ還元する「幸せの森」プロジェクト

さて、色々とお話を伺ってきましたが、今後、地域密着企業として地域へ還元する具体的な取り組みがあれば教えていただけますか?

尾崎 私は、いつも社員やアルバイトのみんなに「電車に乗ったときにこの人の横に座りたいなと思われる人でいてね」と、伝えています。そうしたことからも、社会貢献が始まると考えています。それから、フロウヴァルド構想というのがあります。フロウヴァルドとはドイツ語で「幸せの森」という意味。西国分寺の姿見の池の横に尾崎家が所有している約180坪の細長い土地があって、主人の父がその土地で「昔の姿見の池の風景を再現したい」という夢がありました。現在、その場所に市民のみなさんへ開放できるような施設を作ろうと、国分寺市と一緒に計画を進めているところです。

―「フロウヴァルド(幸せの森)」というネーミングにワクワクしますが、どのような施設になるのでしょうか? 

尾崎フロウヴァルドは、私が嫁いでからずーっと「3世代が共有できる癒しの空間を作りたい」と言い続けていたので、そのようにしたいと思っています。フロウランドヴァウ(幸せな農場)で作られたものを食べたり、販売したり、子どもたちは体験学習が出来たり、ワークショップや社内研修なども実施したいと考えています。年配の方が利用できる場所や今、自宅でやっている家庭文庫(ともだち文庫)も出来るといいなと思っています。

―素敵な構想ですが、施設の完成は、いつぐらいになる予定ですか?

 尾崎 当初、2013年の4月の完成予定でしたが、実際にはもう少し先になりそうです。建物はドイツでシュタイナー建築を学んだ岩橋亜希菜さんに設計をお願いしています。
※ シュタイナー建築—シュタイナーはドイツの人智学者、建築家、教育者。現在では、全世界に独自のプログラムをもつシュタイナー学校(日本国内にも)がある。建築物は、有機的な形で、木、しっくい、大理石、テラコッタタイルなどの自然素材を多用しているのが特徴。

―完成するのが今からとても楽しみですね。ところで、尾崎さんにとって国分寺はどういう場所ですか?

 尾崎 第二の故郷ですね。八王子の出身ですが、24歳で国分寺に来たので、こちらでの暮らしの方が長くなりました。
もしかしたら八王子よりも好きかもしれません。国分寺は私にとって大事な場所、本当に好きな街です。

―では、最後に尾崎さんの関心事、将来の夢について教えて下さい。

 尾崎 現在の関心事は、人の成長ですね。30年前からメンタルトレーナーに興味がり、今は、NLP※を学んでいます。将来の夢は、弊社の文化を日本だけではなく、世界に発信することです。
人と人の縁をつないでいくことが私のミッションだと思っています。

※NLP —神経言語プログラミングの略で優れた能力を持った人の行動バターンを分析し、パターン化することで作られた、コミュニケーションや心理療法などを中心にした心理学


尾崎さんのぶんハピ 国分寺歴 28年

本社の場所と武蔵国分寺公園近くの小さな森

私のぶんハピは、本社のあるこの場所でしょうか。他は、武蔵国分寺公園付近をウォ−キングしているときに見つけた保育園近くにある小さな森のようなところです。その場所がとてもいいな〜と思います。

インタビューを終えて

「世界一幸せになる朝礼」は、朝から頭も体も全開になり、幸せと一緒に元気ももらえる特製フレッシュジュースのようでした。そして、「フロウヴァルド構想」のお話は今から完成が楽しみです。尾崎さんは、毎日ご両親へ感謝の言葉を伝えるはがきを送っているそうで、取材した日で1647枚とのことでした。取材後、私も実家の両親にはがきを送ったところ、「どうしたの?」と母が驚いて電話をかけてきましたが、とても喜んでくれました。毎日は無理でも今後も続けたいです。人は一人では生きていけません。まず、家族、友人など自分の周りにいる大切な人からきちんと感謝の気持ちを伝えていきたいと思いました。尾崎さんの柔らかく温もりのある声で終始、和やかな雰囲気の中、楽しく取材が出来ました。(途中でご自身が文章を書かれた絵本「the tree of life」の朗読と歌を素敵な声で聞かせて頂きました。) 国内だけでなく海外へも飛び回っていらっしゃる尾崎さん、多忙な中、お時間を作っていただきありがとうございました。

 取材:CHEERS

 


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