ぶんじ寮 その2

〜地域の活動について〜

ぶんじ寮は住むための場所であると同時に、地域に開かれた場所でもあります。
実際にどのような活動を行っているのかお聞きしました。

ぶんじ寮の門にある掲示板には、寮の庭で育てている野菜の販売のお知らせ、寮の自治会新聞などが貼られています。新聞にはぶんじ寮の近日のイベント告知などとあわせてまちの人からの声も書かれており、近隣にお住まいの方とぶんじ寮のみなさんとの往復書簡のようです。

玄関の門に貼られた自治会新聞や野菜販売のお知らせ

ぶんじ寮の庭の畑、季節ごとに数種類の野菜を栽培して販売

玄関口にあるまちのシェア傘

そして、玄関先には『まちのシェア傘』と書かれたバケツにたくさんのビニール傘が置かれていました。地域の人が誰でも必要なときに使ってもらえるようにと設置されたもの。これも寮の住人のアイディアの一つ。

イベントは寮の住人たちが自発的に企画して行っていて、参加者が0名というイベントもあるとか。コクフェス、ぶんぶんウォークなど国分寺市内で行われているイベントにも積極的に参加し、2023年には、年間で60〜70回ほどイベントを開催したそうです。

ぶんじ食堂のメニュー看板

その一つに、一人ひとりができることを持ち寄り、みんなで育てる食堂『ぶんじ食堂』があります。ぶんじ寮の発起人でもある永井千春さんを中心に2018年から、国分寺市内のいろいろな場所を借りて行われていた取り組みです。

現在はここ、ぶんじ寮を拠点に毎月、定期開催されています。(詳しくは、ぶんじ食堂ホームページ:https://bunji-shokudo.org)ぶんじ食堂でひとつの食卓を囲むのは、未就学児から人性の諸先輩方まで。

ボリュームたっぷりのメニュー

食を介したイベントは地域を繋げる良いイベントですね。食のイベントでは、クルミドコーヒーオーナーの影山さんとぶんじ寮の住人が1つのテーマ(今までに開催したテーマ:「暮らしとケンカ」、「親はこどもにどこまで愛情を注がないといけないんだろう?」など)について対談し、その後一緒にランチを食べるという‘サンデーブランチ’ や、お酒片手にその日のテーマについてゆったり語らう‘イエノミ’ (今までに開催したテーマ:「おもいで」「トキメキ」など)があります。

その他にも、映画上映会(今までに上映した映画:東ティモールの闘いをとりあげた「カンタ!ティモール」、能登の塩作りに焦点をあてたドキュメンタリー映画「ひとにぎりの塩」)などを開催しています。バーベキューや、中庭を利用した焚き火、お花見や、ぶんじ寮の屋上での花火観覧が人気のイベントだそうです。

ぶんじ寮近くの公園で地域のひとも一緒にお花見

かつて幡野さんが主催したイベントで、“ぶんじ寮の屋上黙考“というイベントがありました。ぶんじ寮の屋上でただただボーっと考えましょうというイベントで、おしゃべり禁止!というもの。こちらは参加者1名で、主催の幡野さんとお2人で行われたということもあったそうです。

7月、東京競馬場の花火をぶんじ寮の屋上からみようというイベントに、6歳になる娘と参加しました。花火の開始とほぼ同じタイミングで寮に着き、慌てて屋上へ上がるとすでに屋上はたくさんの人でにぎわっていました。

ぶんじ寮屋上からの見た府中の花火

近所の小学生がコーヒー屋さん・ジュース屋さんを開いていたり、どこからか食べ物を焼くいい匂いがしていたり、D Jがいたり、そこは小さなお祭り会場のようでした。屋上中央あたりにはシートを敷いた家族連れが何組かいらっしゃり、それぞれにくつろいで楽しんでいる様子でした。その1組に声をかけると、幡野さんのお子さん、青音ちゃんと同じ保育園に通うお子さんがいらっしゃるというご家族で、悠さんに誘われて参加しましたとのこと。普段でもぶんじ寮にふらっと立ち寄って遊ぶことがあります、とのお話でした。そのお隣には、屋上での花火観覧は何回目かという幡野さんの同級生のみなさん、最初は数人だったのに今年はこんなにたくさんの方が集まっていて嬉しいとおっしゃっていました。

また、ぶんじ寮の目の前にお住まいだというおじいさまもいらっしゃり、家からだと全く見えないがここの屋上からだと花火がよく見えてうれしいと笑顔でお話ししてくださいました。仕事や所属や年齢に関係なく誰もがゆったりと集える雰囲気があり、とても居心地が良く、娘とともに楽しい時間を過ごさせていただきました。

子どもたちによる蚤の市、訪れる人々で賑わっていました

2024年11月23日(土)、24日(日)の2日間にわたり、ぶんじ寮4周年を祝して「しょうもない万博」が開催されました。23日のお昼過ぎに伺うと、庭先でこども蚤の市が開催されていました。子どもたちの手作り小物のお店、飲み物やさん、また射的、ボーリングといったゲーム屋さんなど個性豊かなお店が出店されていて、和やかな楽しい雰囲気でした。

国分寺市全域で行われているぶんぶんウォークの開催期間中ということもあり、ぶんじ寮全体がとても賑わっていました。寮内と中庭では、ぶんじ食堂、住民とご近所さんのライブ、住民による写真展、テントサウナなどが行われ、屋上ではこくぶんじカレッジの皆様による焚き火が行われていました。夜にはイエノミ、公開ぶんじ寮住民ミーティングなども行われていたそうです。

※こくぶんじカレッジとは、「まちが自分ごとになる」をテーマに国分寺の街を楽しむ活動を始めたい人、地域とつながる事業やお店の新しい形を考えたい人、それらの活動をサポートして街をもっと元気にしたい人が学び活動する連続講座です。(こくぶんじカレッジのHPより引用:https://kokubunji-college.net)

これらのイベントは、ぶんじ寮という場所とその住人が地域の人・外部の人と繋がるきっかけになってくれるものです、とのこと。今後はもっとたくさんの方に参加してもらえるようにしていきたいと幡野さんご夫妻はおっしゃっていました。

管理人室横の壁にたくさん貼られている青音ちゃんの写真にぶんじ寮のみんなが温かく成長を見守っているのを感じました

ぶんじ寮に引っ越してきて出産し、子育て真っ最中という幡野ご夫妻、私自身も子育て中ということもあり、ここでの子育てについてお聞きしました。

お子さんができて寮での生活に変化はあるかどうかお聞きしたところ、ha幡野さんは特に変化はないとのお即答でした。奥様の悠さんは即答されたことに少し驚かれていましたが・・・。寮に赤ちゃんがいるという環境は、ぶんじ寮の住人にとってそれぞれに変化があったのではないかとお聞きすると「仕事が忙しいときや自分たちの体調が悪いときには寮のみんなが交代で保育園の送迎をしてくれ、夜に用事があるときには青音ちゃんをお風呂に入れ、寝かしつけもしてくれることもあります」と悠さん。青音ちゃんの存在を寮のみなさんが自然に受け入れ、共に過ごしている様子が感じられました。ぶんじ寮の住人のお一人、櫻林栄吉さんは現在、保育士の資格を取得しようと勉強中だそうです。栄吉さんはもともと子どもが好きで保育士という仕事は憧れの1つだったとのこと。思いはあっても行動できていなかったところ、ぶんじ寮で青音ちゃんと触れる機会ができ、それが資格取得に向けて勉強を始めるきっかけになったそうです。

子育てが閉塞的になりがちな今日この頃、両親以外に子どもを見守る目がたくさんある環境はとても稀少なことに感じました。「ぶんじ寮に住んでいなければ2人きりの子育てなので、もっともっと大変だったかもしれない」とお2人そろっておっしゃっていました。ここはお2人が子育てをしながら父親、母親としてだけでなく自分らしくいられる場所、それは青音ちゃんが育っていく過程でも大切なことだと思いました。

ぶんじ寮のオープンから4年半、今後の展望についてもお聞きしました。

イベントなどを通し、ぶんじ寮をより開かれた場所にしたいと考えていらっしゃるそうです。まちの人にもっと気軽に出入りしてもらえる場所になるといいなとおっしゃっていました。実際にこれまでにここへ出入りした近所の方は、両親ともお仕事などで留守のときに寮にやってくる小学生、寮生とバンドを組んで練習をはじめたおじいさま、共有スペースで1人くつろぐ年配の女性。その方が逆に寮生をご自宅に招いて夕ご飯をご馳走する、ということもあったのだそうです。このように、地域の方がふらっと立ち寄れる場所に、ゆっくりゆっくり育っていくと良いなとお話しくださいました。「公園みたいにいろんな人が出入りしたら面白いよね」と幡野さんはおっしゃっていました。

子育てをする中で、全身全霊で遊ぶ子どもたちをみて、生きているなあと感じることがたくさんあります。そしてふと、人はいつを境に世界と全力で対峙することから遠ざかっていくのだろうと考えてしまいます。

幡野さんにご自身の在り方についてお聞きすると、「‘何ものにもとらわれず、遊ぶように生きたい’という願望が日々の活動に繋がっているように思う」とのお答えが返ってきました。

ぶんじ寮を訪ね、幡野さんご夫婦のお話を伺い、住人の方ともお話をして、少し大袈裟なようですが‘本気で生きる‘ってなんだろうという思いが頭をよぎりました。ぶんじ寮は、大人が本気で遊び立ち止まって考えることのできる場所、そしてそんな大人が集う場所は、大人にとってもこれからを生きる子どもたちにとっても豊かで面白い場所なのではないかと感じました。

  • 施設利用者へ一言

人との関わりの修行に来てください!!

今後は、高齢者の方(バリアフリーが完備されていないため、その点は今後の課題です)、子育て世代の方にもぜひいらしてほしいです。寮の住人以外の方のイベント開催も募集中です。シェアキッチンの利用をご希望の方もぜひお声がけください。ダメなことはありません、とりあえずやってみる、問題が起きたらそのときにみんなで考える、それがぶんじ寮です。

 

幡野雄一さんのぶんハピ 国分寺歴 37年

やりたいことを口にしたときに面白がってくれる仲間がいること

 

悠さんのぶんハピ 国分寺歴4年   青音ちゃん国分寺歴 2年

幡野さんご家族。愛猫のぶんじ(愛称ののちゃん)と一緒に

ぶんじ寮の屋上
好きなポイントは広いところ。こんなに広い屋上は高級住宅にでも住んでいない限りなかなか得られないので (笑)。
周りに高い建物が少なく見晴らしが良いところも好きです。春には桜、夏には花火、秋には柿、冬には富士山が見えて四季も楽しめます。是非一度来てみてください!

 

ぶんじ寮HP: https://lit.link/bunjiryo

ぶんじ寮Instagram:https://www.instagram.com/bunji.ryo/

ぶんじ寮Facebook:https://www.facebook.com/bunji.ryo/

連絡先:

 

 

取材:ぶんハピリポーター

 


ぶんじ寮 その1

‘遊び’を中心に地域に開かれた

新しいまちの交流の場に

門につけられた手作りの看板

※今回は、2回に分けて記事をまとめました。

まず1回目はぶんじ寮についてご紹介します。

武蔵国分寺公園の南側、国分寺崖線の湧水で有名なお鷹の道・真姿の池湧水群を過ぎてさらに南へ少し行くと、畑の残る緑豊かな住宅街の中に、ぶんじ寮が見えてきます。3階建ての白い大きな建物、屋上も見えます。ぶんじ寮と書かれた手作りの看板がかけられた門を抜けると左側にはビニールプールに水を張った田んぼがあり、刈り取りの終わった稲が稲架に干されていました。

プール田んぼの奥には畑があり
どちらも寮の住人が世話をしている

ぶんじ寮は、国分寺に本社のある会社の独身寮として使われていた建物を改修してオープンした‘まちの寮’です。敷地は約220坪、中庭を挟んで旧館、新館と呼ばれる2棟からなります。旧館の1階にはお風呂、シャワー室、机と椅子が置かれた小さなホール、管理人さんの部屋(キッチン、トイレ、お風呂付き)があります。2階には6畳ほどの個室が12部屋あります。

ぶんじ寮外観

 

中庭を抜け新館へ向かうと、1階に洗濯室、食堂とキッチン、ソファや本棚が置かれたゆったりしたリビングのようなスペースがあります。新館の2階には8部屋の個室があります。1階にあるキッチンやお風呂、洗濯室、リビングは寮の共有スペースです。

シャワールームは寮オープンのときに新設した手作り

ソファの置かれたリビングスペース
手前はダイニングテーブル

新館1階のリビングスペースをお借りして、寮の管理人をなさっているご家族、幡野雄一さん、悠さんにお話を伺いました。お2人は、寮に住みながら青音ちゃん(2歳)の子育て中です。

雄一さんは、ぶんじ寮の発起人、企画者のお1人です。お父様の代から国分寺に住む根っからの国分寺っ子だそうです。若い頃から‘生きるとは?人はいかに生きるべきか?’と思考し続け、ヒッチハイクや野宿生活などを経験した後、大学に入学、仏教を学びます。卒業後は子どもたちのための探究型の学習塾や、哲学対話の場作りなどの活動を行っていました。

 

新館2階の個室は6畳ほどの広さでベッドが設置されている

コロナ禍の2020年6月、現在の建物の存在を知り、この場所で何か面白いことができないかと仲間とともにその使い方を考える『妄想会議』なるものを開催します。

同じ頃、西国分寺のクルミドコーヒーのオーナー影山知明さんは、コロナ禍の影響もあり、お金に頼りすぎている現代の生活に疑問を感じ、暮らしに必要なお金を半分にできないか、まちの寮のようなものを作れないかと考えていました。

そんなお2人と地域の仲間が、その建物を利用して、一緒に寮をつくろうとなり、建物の改修費用を募るためにぶんじ寮プロジェクトのクラウドファンディングを立ち上げます。クラウドファンディングは無事成功し、物件との出会いから約半年後の2020年11月、ぶんじ寮がオープンします。

業務用のコンロや冷蔵庫が備えられた本格的な共同キッチン

幡野さんに「ぶんじ寮の最初のコンセプトは?」と伺うと、「特になし!」とおっしゃっていました。しかし、ぶんじ寮オープンの際に収録された、プロジェクトメンバーのみなさんが寮への思いを話す『ぶんじ寮トーク』という動画を見せていただくと「大人の本気の遊びをしたい、子どもたちにもそんな国分寺の面白い大人をたくさん見てほしい」と幡野さんが話してらっしゃいました。当初から『遊び』というキーワードがご自身の中にあったようです。
寮のオープンに際し、常駐人が必要となり、幡野さんは悠さんと一緒に「寮を管理しない管理人」を条件としてぶんじ寮に住むこととなったそうです。

現在、寮の家賃は4万5000円/月(部屋代3万1000円、光熱費14000円)だそうです(部屋によって多少金額が異なります)。現在、10~50代の、男性14名・女性7名が住んでいるそうです。

1階のリビングの奥にはゲストルームが2部屋あり、使用料は3500円/泊(2日目以降は3000円/泊)とのことです。ゲストルームは、育児休暇を利用して兵庫県から1ヶ月ほど滞在した日本人家族やSNSでぶんじ寮を知ったアメリカ人家族が6ヶ月ほど滞在したこともあるそうです。ゲストルームは、空いていれば誰でも宿泊することが可能です。

部屋番号のついた食品棚のカゴは最近設置されたもの。所有者がわかるようになった反面、グレーゾーンがなくなったという声があるのもぶんじ寮ならでは

ぶんじ寮の入居に条件はあるかどうかとお聞きしたところ、「特にないです。どんな方でもいらしてください!」とのことでした。入居希望が重なったらくじ引きになるそうです。

共同生活のルール決めはあえて行っていないとのこと。幡野さんご夫妻は『管理しない管理人さん』、「何かが起こらないようにとルールを決めてしまうのはつまらない、とりあえずやってみる、何か起きたらその時にみんなで考える」と雄一さん。

悠さんからも「住み始めてみんなで揉めたり話し合ったりしながら、だんだん感情が出せるようになる人もいます」とのこと。人と人が顔を突き合わせて話し合う関係が希薄になりつつある昨今、ぶんじ寮での住人同士の関わり合いはとても貴重なものに感じました。

ぶんじ寮が地域でどのような活動を行っているのか
続きをその2でご紹介したいと思います。お楽しみに!

 

取材:ぶんハピリポーター