ぶんじ寮 その1

‘遊び’を中心に地域に開かれた

新しいまちの交流の場に

門につけられた手作りの看板

※今回は、2回に分けて記事をまとめました。

まず1回目はぶんじ寮についてご紹介します。

武蔵国分寺公園の南側、国分寺崖線の湧水で有名なお鷹の道・真姿の池湧水群を過ぎてさらに南へ少し行くと、畑の残る緑豊かな住宅街の中に、ぶんじ寮が見えてきます。3階建ての白い大きな建物、屋上も見えます。ぶんじ寮と書かれた手作りの看板がかけられた門を抜けると左側にはビニールプールに水を張った田んぼがあり、刈り取りの終わった稲が稲架に干されていました。

プール田んぼの奥には畑があり
どちらも寮の住人が世話をしている

ぶんじ寮は、国分寺に本社のある会社の独身寮として使われていた建物を改修してオープンした‘まちの寮’です。敷地は約220坪、中庭を挟んで旧館、新館と呼ばれる2棟からなります。旧館の1階にはお風呂、シャワー室、机と椅子が置かれた小さなホール、管理人さんの部屋(キッチン、トイレ、お風呂付き)があります。2階には6畳ほどの個室が12部屋あります。

ぶんじ寮外観

 

中庭を抜け新館へ向かうと、1階に洗濯室、食堂とキッチン、ソファや本棚が置かれたゆったりしたリビングのようなスペースがあります。新館の2階には8部屋の個室があります。1階にあるキッチンやお風呂、洗濯室、リビングは寮の共有スペースです。

シャワールームは寮オープンのときに新設した手作り

ソファの置かれたリビングスペース
手前はダイニングテーブル

新館1階のリビングスペースをお借りして、寮の管理人をなさっているご家族、幡野雄一さん、悠さんにお話を伺いました。お2人は、寮に住みながら青音ちゃん(2歳)の子育て中です。

雄一さんは、ぶんじ寮の発起人、企画者のお1人です。お父様の代から国分寺に住む根っからの国分寺っ子だそうです。若い頃から‘生きるとは?人はいかに生きるべきか?’と思考し続け、ヒッチハイクや野宿生活などを経験した後、大学に入学、仏教を学びます。卒業後は子どもたちのための探究型の学習塾や、哲学対話の場作りなどの活動を行っていました。

 

新館2階の個室は6畳ほどの広さでベッドが設置されている

コロナ禍の2020年6月、現在の建物の存在を知り、この場所で何か面白いことができないかと仲間とともにその使い方を考える『妄想会議』なるものを開催します。

同じ頃、西国分寺のクルミドコーヒーのオーナー影山知明さんは、コロナ禍の影響もあり、お金に頼りすぎている現代の生活に疑問を感じ、暮らしに必要なお金を半分にできないか、まちの寮のようなものを作れないかと考えていました。

そんなお2人と地域の仲間が、その建物を利用して、一緒に寮をつくろうとなり、建物の改修費用を募るためにぶんじ寮プロジェクトのクラウドファンディングを立ち上げます。クラウドファンディングは無事成功し、物件との出会いから約半年後の2020年11月、ぶんじ寮がオープンします。

業務用のコンロや冷蔵庫が備えられた本格的な共同キッチン

幡野さんに「ぶんじ寮の最初のコンセプトは?」と伺うと、「特になし!」とおっしゃっていました。しかし、ぶんじ寮オープンの際に収録された、プロジェクトメンバーのみなさんが寮への思いを話す『ぶんじ寮トーク』という動画を見せていただくと「大人の本気の遊びをしたい、子どもたちにもそんな国分寺の面白い大人をたくさん見てほしい」と幡野さんが話してらっしゃいました。当初から『遊び』というキーワードがご自身の中にあったようです。
寮のオープンに際し、常駐人が必要となり、幡野さんは悠さんと一緒に「寮を管理しない管理人」を条件としてぶんじ寮に住むこととなったそうです。

現在、寮の家賃は4万5000円/月(部屋代3万1000円、光熱費14000円)だそうです(部屋によって多少金額が異なります)。現在、10~50代の、男性14名・女性7名が住んでいるそうです。

1階のリビングの奥にはゲストルームが2部屋あり、使用料は3500円/泊(2日目以降は3000円/泊)とのことです。ゲストルームは、育児休暇を利用して兵庫県から1ヶ月ほど滞在した日本人家族やSNSでぶんじ寮を知ったアメリカ人家族が6ヶ月ほど滞在したこともあるそうです。ゲストルームは、空いていれば誰でも宿泊することが可能です。

部屋番号のついた食品棚のカゴは最近設置されたもの。所有者がわかるようになった反面、グレーゾーンがなくなったという声があるのもぶんじ寮ならでは

ぶんじ寮の入居に条件はあるかどうかとお聞きしたところ、「特にないです。どんな方でもいらしてください!」とのことでした。入居希望が重なったらくじ引きになるそうです。

共同生活のルール決めはあえて行っていないとのこと。幡野さんご夫妻は『管理しない管理人さん』、「何かが起こらないようにとルールを決めてしまうのはつまらない、とりあえずやってみる、何か起きたらその時にみんなで考える」と雄一さん。

悠さんからも「住み始めてみんなで揉めたり話し合ったりしながら、だんだん感情が出せるようになる人もいます」とのこと。人と人が顔を突き合わせて話し合う関係が希薄になりつつある昨今、ぶんじ寮での住人同士の関わり合いはとても貴重なものに感じました。

ぶんじ寮が地域でどのような活動を行っているのか
続きをその2でご紹介したいと思います。お楽しみに!

 

取材:ぶんハピリポーター